帰らなかった。
"よし。髪の毛を切ったろ!"と言われ身をまかした。
東京では行きつけの散髪屋さんがあるが
大阪では、いつも切って貰っている。
もちろん理容師さんではナイ。
リーゼントのカットを東京の散髪屋さんで
"よく見ておきなさい"と言われ、見よう見まねで切ってくれる。
初めは、話なんかをしながらチョキチョキと
その内、チョキチョキの音のみ...無言。
その後、"ヨッ。"とか"ホッ。"とかアイノテのような声が聞こえ出す。
ヤバイ...。
このアイノテが聞こえ出すというコトは
必ず、何か問題がある状況なのだ。
よし。完成。と言いながらポンと肩を叩かれ
"ヨッ。坊ちゃん"と声をかけられる。
"イイゼー。イイゼー。ヨッ、オトコマエ!"
と半笑いでうなずいているが、目は泳いでいる。
そのまま風呂に入り、鏡を見た。
ナニかを冠ったような、オッサンの坊ちゃんが鏡の中に居る。
今日は帰ろう。